SAXZ

(TOM EJIRI Hard Rubber)

SAXZトム江尻モデル アルトマウスピースHR

(2022年発売)

Ballad

Funk

デヴィッドサンボーンのモデルや純銀モデルのイメージが強いSAXZだが、2011年にアルト、テナー、ソプラノのハードラバーのシリーズを発表している。すでにVintage1950のハードラバーを使用させてもらっていたが、さらに自分好みのラバーにしてもらうため改良を加えた上でTom Ejiriモデルとして発表と相成った。大ざっぱな流れとしては、まずVintage1950のビークを高くしてもらい、次に抵抗感と倍音の向上のためシャンクに銅を巻いてもらうというカスタムに落ち着いた。他にも反応を鋭くするべくバッフルを高くしてみたり、オープニングを替えてはどうか?と思案したり、シャンクやサイドウォールを厚くしてみたり。。。。筆者は言うだけだがSAXZの渡邊氏にはずいぶん骨を折ってもらった。

コロナ禍でライブが激減して実践でのデータがなかなか取れず、完成までにずいぶん時間を要してしまった。

<外観・デザイン>
まず見てもらいたいのは大きなビークのふくらみだ。SAXZの渡邊氏曰く「パワーバルジ」。マッスルカーのボンネットに見られる膨らみ、アレである。マウスピースをくわえたときの「厚み」が欲しい筆者とマウスピースの「鳴り」にこだわる技術者とのせめぎ合いが生んだ世界でも類を見ないデザインである。

ビークが厚いとマウスピースの鳴りが重くなり、薄いと良く鳴るマウスピースになると言う事だ。近年のマウスピースのビークが総じて薄いのは鳴り易さを求めての事だが、ブリルハート系のマウスピースが好きな筆者としては、口腔の容積が狭くなり鋭い音色に向かう方向性が生まれるため、ビークの低いラバーマウスピースはあまり好みではなかったのだ。「鳴り」と「太さ」の両立を目指すためのデザインがこの「パワーバルジ」だ。

そもそもなぜ筆者がビークを厚くしたいのか?と言えば、古いトナリンなどの太いくわえ心地が好きなのがそもそもの動機なのだが、加えて強制的に口腔を開く状態なる事で音が太くなるというのも利点だと思うからだ。

もう一つの特徴はシャンクに巻かれた銅素材である。初期の試作品には無かった仕様だが、ピアニシモでの抵抗が筆者には軽すぎるため加えてもらった。ノーラッカーのため数ヶ月で変色し、音色も見た目も渋く変化する。

デザイン的にも個性的な物に仕上がったと思う。

なお、重量はVintage1950の21グラムに対してTom Ejiriモデルは34グラムと約1.5倍の重量増加を果たしている。

<ファーストインプレッション>

う〜む違う。Vintage1950とはチャンバーはほぼ同等なのにビークの形状でこれほどまでに音色が変わるとは・・・・・ビークの厚い筆者好みのマウスピースを吹いている感触なのに、反応は早く、パワーもある。音色のウォームさや倍音の多さは素晴らしい。SAXZだけに抜けの良さも完璧だ。

シャンクに巻かれた金属がメタルの音色要素を強くするかと危惧したが、それは無く、あくまで「ラバー」の音色と言えるだろう。バリの「ハイブリッド」のようなメタルとの音色的なハイブリッド感を狙った物ではない。

見かけはちょっと変わり種だが、音色的には至極真っ当でクセ玉とは真逆のオールマイティに使える高性能なマウスピースに仕上がっている。そのギャップもお気に入りだ。

音色はダークかブライトかと言えば、耳につく高音は無くダーク寄りだと思うが、重々しい感じではなく、ライトでクリアでスモーキーな良いバランスのラバーマウスピースだと思う。

近年は「ラク」なマウスピースが多く、特に日本のメーカーはその傾向が強い。日本人のプレイヤーの要望が反映した結果なのだと思うが、筆者はやはり「吹き答え」が欲しい。TOM EJIRI モデルはその点も重視した物に仕上がっている。

<ライブで使ってみて>
Vintage1950も高性能でいいマウスピースで、パワーも音色も申し分ないのだが、もう少し抵抗感と音の太さが欲しく開発してもらったマウスピースだけに、その狙いは十分達成できたように思う。全体的に音も太くパワーもさらにアップしたようだ。シャンクの銅素材も、「キン」とした金属的なものではなく、あくまでウォームな音色を増幅している感じで変な違和感は全くない。音色は雑味たっぷりとは言えないが、スウィートで倍音の多い音色は特にノーマイクの環境では魅力的だ。

ジャズライブでは味のあるビンテージマウスピースも使っては見たいのだが、早いパッセージや跳躍や音程、フラジオなど実際のシーンでは色々とストレスがかかる。難しい曲などがあるとなおさらだ。お客さんに聞いてもらう以上、あまり楽器によるフィジカルなストレスは受けたく無いのが正直なところだ。

欠点らしい欠点は感じないが、ビンテージのマイヤーなどを探している人にとってはちょっと方向性が違うだろう。要因は色々あろうが素材の違いは大きいと思う。このマウスピースはNYマイヤーをコピーした物ではないが、形状を近づければ近づけるほど素材の壁にブチ当たるように思われる。SAXZは現代の素材に合わせたチャンバーデザインで古き良きサウンドのイメージを追求している。NYマイヤーの良さはもちろん認めているが、天の邪鬼な筆者は「いい音が出て当たり前」みたいなのはつまらないので、こういうマウスピースを使いたいのだ。

リガチャーは昔から持っている古いマイヤーのリガチャーが相性良く、筆者好みの音色が得られる。ハリソンも悪く無いが、ラバーとハリソンの組み合わせの見た感じがあまり好きではないのでやめにした。ブリルハートの復刻版も面白いが、ちょっとウォームすぎるかな?

リードは相性にそれほど苦労する事は無いが、筆者はLaVozのMHをメインに青箱の2-1/2あたりを使っている。

<キャリアの短い人でも大丈夫か?>
ウォームでスウィートな音色、パワー、抜けの良さを求める人なら誰にでも。ビークの厚みもあるので、音の太さも得られる。薄いマウススピースに慣れた人は最初多少慣れが必要だと思うが、アンブシュアを柔軟に考えて太い音色を得るために是非トライしてもらいたい。世界が変わりますヨ。息の通りはスムーズでその辺は吹き易いと思う。

<どんなシチュエーションで使ってみたい?>
もうこれは小編成のジャズが最高だろう、スモールコンボはもちろんギターとデュオとかサックスの生サウンドが聞こえ易い状況でとてもマッチすると思う。フルパワーでも対応できるのでファンクセッションでも全く問題なのは実証済み。筆者はメインで純銀のモデルを使いその使用範囲もとても広いので、このマウスピースはアコースティックな環境で早いパッセージを吹くバップやバラードなどを吹いてみたい。

変色したシャンクとマイヤーのリガチャー>

とてもシブイ!音色もシブくなってきたようだ。(半年ほど経過)自分のネームが隠れるが致し方ない。なにより音が優先されるのだ。

2022/08/25

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